PTCA後にコレステロール塞栓症を合併し腎不全で死亡した1剖検例

井上哲郎、伊賀幹二、堀健次郎、津森道弘*、小橋陽一郎*

抄録

症例は,急性心筋梗塞に対して右鼠径部よりPTCAを施行したが、大動脈の蛇行のためカテーテル操作は極めて困難であった81歳男性。入院時 BUN 26.9 mg/dl、Creatinine 1.3 mg/dl であった腎機能が徐々に悪化し、コントロール困難な高血圧が出現、PTCA 後50日目にはBUN 89.4 mg/dl、Creatinine 8.2 mg/dl と上昇し、肺炎・肺水腫を併発、PTCA後90日 で死亡した。剖検では高度のアテローム硬化を特に腹部大動脈に認め、組織学的に左右腎臓に多数のコレステロール塞栓がみられ、カテーテル操作によるコレステロール塞栓が本例の腎不全の原因と思われた。コレステロール塞栓症の診断は生前には困難であり、その予後は極めて悪いといわれる。本邦では現在報告数は多くないが、近年高度の動脈硬化を伴う症例や高齢者へのカテーテル検査は増加しており、カテーテル検査後の腎不全の原因の1つとしてコレステロール塞栓には十分留意する必要があると思われた。